家族信託は、親の財産を子どもが管理する仕組みです。不動産の有効活用や長期的な資産管理ができる反面、コストや継続的な義務も生じます。
この記事では、家族信託の概要やメリット、注意点を解説します。
家族信託とは
家族信託とは、親がまだ元気なうちに信頼できる子どもや親族に自分の財産の管理を任せる契約です。
家族信託を活用すると、不動産の手入れはもちろん、物件の売却や賃貸も可能になります。
このように、親の意思を尊重しながら、財産の有効活用ができるのが家族信託の特徴です。
家族信託の主なメリット
家族信託を利用すると、主に3つの大きなメリットがあります。
不動産の売却や売却益で受託者が新たな物件を購入できる
親が認知症になると、家族でも勝手に不動産を売ることはできません。
しかし、信託契約書に売買の記載があれば、受託者が売主として不動産を売却できます。さらに、契約書で認められていれば、売却益で新たな物件を買うこともできます。
遺言では不可能な先の先までの財産の行く末を指定できる
遺言では相続時の財産分配しか指示できません。
一方、家族信託では第一受益者以降の受益者も指定できるため、長期的な財産の行方を決められます。
委託者の意思判断能力に左右されずに管理・運用・処分が行える
認知症などで判断能力がなくなると、通常は不動産売却や財産管理ができません。
しかし、元気なうちに家族信託を結んでおけば、委託者の判断能力が低下しても、受託者が主導して適切な財産管理や不動産売却を行えます。
このように、家族信託は将来を見据えた柔軟な財産管理が可能です。
家族信託の注意点
家族信託にはメリットがある一方、注意しておかなければならない点もいくつかあります。
家族信託の締結にはコストがかかる
家族信託には、統一の料金基準がなく、目的や財産の内容によっては100万円を超えるコストがかかることもあるため事前に十分な検討が必要です。
関係者が長期にわたり拘束される
家族信託は長期にわたって影響を及ぼす契約です。
契約後、受託者である子どもは長期間にわたり契約内容に縛られます。
毎年の収支報告書の作成や保管など、継続的な義務が発生します。
この負担を十分に理解し、覚悟を持って引き受けなくてはいけません。
家族信託に強い専門家が不足している
家族信託に精通した専門家は多くありません。
契約書作成のサポート経験者は増えていますが、契約後の対応や信託終了までを一貫して経験している専門家は少ないのが現状です。
適切な専門家を見つけるには、慎重に見極める必要があります。
これらの注意点を十分に理解し、家族で話し合った上で家族信託の導入を検討することが大切です。
まとめ
家族信託は、親の財産を子どもが管理する仕組みです。不動産の柔軟な運用や長期的な財産管理が可能になる一方で、コストや長期的な義務も伴います。
導入を検討する際は、メリットとデメリットを十分に理解し、家族で話し合うことが大切です。
司法書士など専門家の助言を得ながら、状況に合った最適な選択をしてください。