相続では、借金や債務も含めて引き継ぐ場合があります。
そのため遺産の内容によっては、相続を放棄するという選択が必要になるケースも珍しくありません。
今回は、相続放棄を検討すべきケース、そしてそのメリット・デメリットを解説いたします。
相続放棄を検討すべき主なケース
以下のようなケースでは、相続放棄を検討する価値があります。
- 被相続人(亡くなったひと)に多額の借金があった場合
- 事業承継で承継者に財産を集中させる場合
- 相続人や被相続人との関係が悪く相続する意思が無い場合
相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったとみなされます。
相続放棄のメリット
相続放棄のメリットは、以下の2点です。
- 借金などのマイナス財産を引き継がない
- 生活への影響を最小限にできる
それぞれ確認していきましょう。
借金などのマイナス財産を引き継がない
大きなメリットは、借金の返済義務を免れることです。
連帯保証債務を含め、あらゆるマイナスの財産に対する返済義務から解放されます。
生活への影響を最小限にできる
財産の調査や遺産分割協議に時間を取られることなく、煩雑な相続トラブルを避けられるのも大きな利点です。
特に複数の相続人がいる場合や、親族間の関係が良くない場合は、相続放棄が良い選択肢になります。
相続放棄のデメリット
一方で、相続放棄にはいくつかのデメリットがあります。
プラスの財産もすべて放棄しなければならない
相続放棄をすると、預貯金や不動産などの資産も一切受け取れません。
財産が負債を超えている場合でも、1度相続放棄をすると財産を受け取れないため注意が必要です。
他の相続人へ影響が及ぶことがある
相続放棄には、下位の相続人に思わぬ負担やトラブルが及ぶ可能性があるというデメリットがあります。
相続放棄は単独で手続きができ、他の相続人の同意や連絡は不要です。
そのため、配偶者以外の相続人が相続放棄をした場合、相続権は自動的に次順位の親族に移ります。
しかし、家庭裁判所から、下位の相続人に対してその旨を通知することはありません。
そのため相続放棄の意思を他の親族にも伝えておかないと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
申立てには期限がある
民法第915条によれば、相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申立てを行う必要があります。
期限を過ぎると、原則として放棄できなくなるため注意が必要です。
まとめ
相続放棄は、相続によって不利益を受けることを避けるために認められた制度です。
被相続人に多額の借金があったり、事業承継を考えていたりする場合には、相続放棄を検討する価値があります。
相続放棄には、借金を引き継がずに済むという大きなメリットがある一方で、デメリットも見逃せません。
遺産の内容に不安がある場合や、被相続人に負債がある可能性が高い場合には、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
